NEW ALBUM Dark Ⅱ Rhythm

青春の闇路を突っ走れ 愛とエゴに満ちた郊外型ロック

 

Welcome to Glider 3rd Album「Dark II Rhythm」 

TEXT by 青木和義(プロデューサー / 葡萄畑, Banda Planetario)

 

2016年2月リリースのセカンドアルバムから1年9カ月ぶりに、Glider待望のサードアルバム「Dark Ⅱ Rhythm(ダークツーリズム)」が リリースされる。

彼等の地元、埼玉県本庄市にあるStudio Dig(スタジオ・ディグ)で、デモ録音からスタートさせた音源を、さまざまなプロセスを経ながら、プロデューサーの青木和義(葡萄畑, Banda Planetario)と、1年近い歳月をかけて完成させた、会心の傑作である。

 

都心から北へ電車や車で2時間ほどの、都会の喧騒を離れた郊外の落ち着いた環境での音作りは、アルバムのコンセプトに、大きな変化をもたらした。タイトル「Dark Ⅱ Rhythm」に込められた暗喩性と諧謔性が、サウンドアプローチや詩の世界の自由度を拡げた事は、紛れもない事実であろう。

 

年ほど前、老舗スタジオとして名高いStudio Digの運営を任された彼等は、リハーサルスタジオとして稼働させると同時に、レコーディングスタジオとしての機能の充実に励んだ。今では、レコーディングで訪れるアーティストも増え、評判も高まりつつある。

 

そんな訳で、 Studio Digは、唯一無二のプライヴェート・スタジオとして、彼等の音作りに大いに貢献してくれている。郊外の町の穏やかな佇まいと、スタジオで奏でられる純度の高い音楽とが融合して、今回の作品に、多大なるパワーを注入した事に、疑問の余地はない。

 

地元マンチェスターのスト ロベリー・スタジオを拠点に数々の傑作を産み出した10cc、NY州郊外のウッドストックに建つ一軒家に籠って、温故知新な名作「Music From Big Pink」を創り上げたThe Band、LAウエスト・ハリウッドの北東端に位置する、初期The Beach Boys録音の聖地I.D.サウンド・スタジオで、 一人黙々と多重録音に励んで、快作「Something / Anything?」を完成させたTodd Rundgrenなどなど・・・。

都市の喧騒と様々な柵(しがらみ) から解放された事で、創作意欲が半端なく刺激され、全く新たな次元の音楽を創造したミュージシャンは数多い。

 

そんな60年代後期~70年 代初頭の、米英の音楽家の動向は、70年代初頭の日本語ロック黎明期のミュージシャンに、大きな影響を与えた。そしてその流れは、今現在も脈々と、Gliderなどの若手ロックミュージシャンに受け継がれていて、実に頼もしいことだ。

 

尚、今作は、彼等自身が立ち上げたインディレーベル「けや木レコード」から、初のリリースとなる作品である。Studio Digの住所が、けや木だからと言う、ベタなネーミングだが、欅(けやき) は長命で、樹齢千年を超えるものもあるそうだ。大きく成長し、末永く継続してくれることを願っている。

 

それでは、彼等自らが「青春の闇路を突っ走れ 愛とエゴに満ちた郊外型ロック」と断言した、Gliderの新たなチャレンジに耳を傾けてみよう。さあ、ダークツーリズムへと出発だ!

 

 

 

1. ダークツーリズム 

アルバムタイトルが決まっていたので、その導入部としてのタイトルソングを・・・と、一番最後に完成させた曲なのだが、バラードと思って油断して聴いていると、思わぬ闇路に誘い込まれる。街の雑踏なのか?部屋の中での会話なのか?不思議なノイズの中に浮かび上がるピアノと、ダークで内省的な歌詞の世界。ジャケットのイラストに描かれた、出口の見えないトンネルに車が吸い込まれる瞬間の、興奮と不安が交錯する様子を、マサハルのアレンジによるストリングスが増幅させて行く。 

 

2. TORIDE LIFE 

愛の砦・砦・砦・・・と果てしなく繰り返される感じが、まさしくダークエンド。軽さと重さの同居、明るさと暗さの共存。芸術的冒険の世界に身を置いた画家、マックス・エルンストのフロッタージュ技法の様な不安定な表現が、ダークツーリズムの世界を見事に描きだしている。常識と狂気。様式美と革新性。対立軸にあるものを同一線上に並べる、創造的破壊もしくは破壊的創造。だからなのか、Godley & Creme脱退後の10ccのような、ファンク&ロックなグルーヴ感が、クールなヴォーカルを包み込んでいる。 

 

3. 市営住宅~Dystopia Lovesong~

軽やかなビートと乾いたヴォーカルの中に、チラチラと見え隠れするオプティミズムとペシミズム。歌詞に展開される心象風景は、明らかに懐かしい未来(Retro Future レトロ・フューチャー)である。アルバムタイトルの「Dark Ⅱ Rhythm」の意味を、少しづつ謎解きしてくれているような曲である。 サブ・タイトルからして、相互離反する言葉をつなげて、不安を煽(あお)っている。女性コーラスの歯切れ良さが、暗い雲を吹き飛ばそうとしている感じだ。 

 

4. 関越シャドウ 

関越自動車道は、東京の西北端から始まり、埼玉県所沢市・川越市、彼等の本拠地本庄市、さらには群馬県の主要な都市を走り抜け、日本海まであと少しの新潟長岡ジャンクションで終わる。運転シミュレーターで、関越道をトレースしてるような情景描写が続き、突如涸れた海と無人塔が姿を見せる。 んんララ~と陽気に歌っているが、影(シャドウ)が覆いかぶさっている不条理なイメージ。レニクラやプリンスの符号が散りばめられた、ファルセット・ヴォイスとファンクネスを前面に押し出したサウンドが、そんな不条理感をあぶりだしている。 

 

5. サンダーソニアの黄色い太陽

Yellow(イエロー)と叫ぶ歌詞が印象的な、サイケデリック・ロック。サウンド全体を支配するジェットマシーン〈フランジング〉効果が、広大な空間の孤独感を増幅させている。アナログ・シンセの音は、テレビ画面に映し出されるカルトSF映画を想起させる。場面設定やドラッギーな情景描写が、時空を滑っている事を意識させる。疲弊した技術と、それに対して何の抵抗もなく共存する仮想空間。近未来のレトロ・フューチャー。近未来小説 「ニューロマンサー」に描かれたサイバーパンク。地球滅亡後の遺跡を廻るダークツーリズム。太陽は黄色く輝き続けるだろう。未来永劫に。 

 

6. ベッドタウンボーイ 

オーソドックスなロック・サウンドのはずなのに、何かが違う。イントロのポルタメントのタップリ効いたアナログシンセや、突然現れるエレピのフ レーズが、革新性に溢れたポップ・ロックへと導いている。このさり気ないオルタナ感覚が、Gliderの真骨頂であり、アルバム全体に貫かれてるポップ感の源泉なのだろう。この曲も、Love Songのような表現を用いながらも、地球滅亡後のような情景が交錯する。奈落の底、計画都市、共同墓地の黄泉・・・まるで夢遊病者のダークツーリズムみたいだ。 

 

7. オカルト 

このアルバムを問題作たらしめているのは、正にこの1曲であろう。ところが、サウンドのテイストは、彼等の敬愛するTeenage FanclubやFountains of Wayneのように、軽やかでポップなフォークロックである。The ByrdsやWilcoの影響までも総動員された、アコースティック・ピアノや12弦ギターを駆使したサウンドデザインは、実に美しい。とは言え、日本沈没、地球滅亡、未来世紀の影、最後の林檎・・・など、軽やかな歌声と共に紡ぎ出される言葉は、一筋縄では行かない。そのだまし絵的レトリックの中に、回り道を厭(いと)わない自分を発見出来るかも知れない。それと、曲の最終章の転調が、まさしくオカルティック。 

 

8. FRUIT WATCHING 

さびついた夏、無邪気なフルーツ、百日紅(さるすべり)・・・などの言葉で、夏から秋への移ろいを描いているのに、冬の寒さを感じさせるこのサウンドは不思議だ。何故だろう?ループリズムを基軸としたサウンドデザインから起因しているとは思うが、The Cardigansに代表されるSwedish Popや Nordic Rockの様に、実にクールな仕上がりである。躍らせようと言う意志の感じられないダンスミュージック、それでいて気だるく踊るのならオッケー!みたいな、アンビバレントな魔力を放つ、Glider風味のエンドレスミュージック。 

 

9. ナルシス 

彼等によると、この曲が、デモ音源の状態から、最も大きく変貌を遂げたとの事だが、緻密に組立られたサウンドデザインに感心する。一聴すれば狙いはすぐ分かるほどの、ストレートミュージックである。洗練されたモータウンサウンドやフィリ―ソウルに、多大なる影響を受けたであろうアレン ジメント。マニアックなリスナーならば、多彩な楽器群やバックコーラスの絡み合う様子を、つぶさに聴き取って楽しんで頂きたい。ミドルエイトの ELOばりのストリングスや、アウトロのハイ・ストリングスは、マサハルとプロデューサー青木が、書き上げたもの。アウトロでのユウスケのスキャッ トは、70年代のソウルシンガーよりもポール・ウェラーからの影響が強く感じられて、何だか微笑ましい。 

 

10. Pearl 

アルバムの最後を飾るのは、ユウスケの歌う極上のミディアムバラード。アコースティック・ピアノ、アコースティック・ギター、エレクトリック・ベース、タイトなドラムスによる、シンプルな編成のバッキングに、宇宙を構成する素粒子のように繊細なシンセ音が、歌に纏(まと)わりついて、心象風景を映し出す。潮騒を切り裂く、廃屋に背をあずけたまま、最果てを待つ呼吸・・・など、淡々と歌い上げる言葉には、何故か不穏な空気が漂う。時空は歪み、時間も場所も人間の存在も、グルグルとループし始める。最後に響くピアノのコード音が、タイム・ワープのように揺れ動いて、ダークツーリズムは最果ての時を迎える。

 

TEXT by 青木和義(プロデューサー / 葡萄畑, Banda Planetario)

 

 

Glider 3rd Album

「Dark Ⅱ Rhythm」

2018年1月24日(水) on sale

Dark Ⅱ Rhythm(ダークツーリズム)

値段 ¥2,500 (+税) / 商品番号 KYK-0001

全10曲収録 / 紙ジャケット仕様

※先行発売日 2017年11月22日 (水)

けや木レコード WEB STORE(通販)

kyk.thebase.in

3rd Album

Dark Ⅱ Rhythm

2018年1月24日 on sale

¥2,500+税 / KYK-0001

〈収録曲〉

01. ダークツーリズム

02. TORIDE LIFE

03. 市営住宅~Dystopia Lovesong~

04. 関越シャドウ

05. サンダーソニアの黄色い太陽

06. ベッドタウンボーイ

07. オカルト

08. FRUIT WATCHING

09. ナルシス

10. Pearl

 

2nd Album

STAGE FLIGHT

2016年2月10日 on sale

¥2,315+税 / PECF-3160

〈収録曲〉

01. 飛行少年

02. GO

03. Maryrose

04. 未知なる旅路

05. Blue Heaven

06. Sci-Fi Sister

07. R.I.P.

08. Alone

09. 蘇生

10. Stage Flight

11. Everlast

12. Saravah

13. OLE (Bonus track)

 

1st Album

Glide & Slide

2014年9月17日 on sale

¥1,944+税 / PECF-3097

〈収録曲〉

01. Overture

02. Sky Is Blue

03. Glider's Monkey Job

04. Boogie Train

05. Marigolds

06. Believe You

07. Glider